ことばと国家 (岩波新書) 田中克彦 岩波書店 1981/11/20

ことばと国家 (岩波新書) - はてなキーワード

from

学校で教えてくれない音楽 (岩波新書) 大友良英 岩波書店 2014/12/20 - いもづる読書日記

 

 本書を読んで、構造主義解説本のたぐいを初めて読んだときに味わった、ソシュール言語学の見事な明快さを思った。本書は「一般に19世紀以来の言語学は、それ自体としての言語をとり出すための努力の連続であったとも言え、その点からすれば、ソシュール以前の歴史言語学ソシュールの没歴史言語学とのあいだには、いかなる断絶もない。言語学が科学になるためには、ことばに加えられている、あるいはことばに等級をつけて差別するあらゆる外的な権威を剥ぎとっていかなければならない。」(22ページ)とするが、にもかかわらず言語学がいかに政治的なものであったかが繰り返し述べられる。ことばが思考というよりは認識=分節化の手段であることから、ことばから歴史的、政治的な背景を剥ぎとることは存外難しい。言語による思考の修飾はあたかも深層心理のようだ。「人間の解放は決して言語学だけがやるものではないが、さまざまな社会的形態をとりつつ、人々をそこにしばりつけ、あらゆる差別と偏見を生みだす動機になっている言語を相手にしているかぎり、言語の科学はその役割から逃れるわけにはいかない。」(216ページ)

~短期集中講座~ 土日でわかるPythonプログラミング教室 環境づくりからWebアプリが動くまでの2日間コース フロイデ株式会社吉谷愛 SBクリエイティブ 2017/09/16

~短期集中講座~ 土日でわかるPythonプログラミング教室 環境づくりからWebアプリが動くまでの2日間コース - はてなキーワード

 

 こんな本も読みましたという備忘録。これでPythonプログラミングができるようになるわけではない。自然言語解析やWebアプリの仕組みなど、とても理解できたとは言えないが面白かった。会社の新人と上司(どちらも女性)という設定なのだが、全く現実感が持てない。会社勤めの経験がない私の欠点を指摘されているようだ。

お金2.0 新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book) 佐藤航陽 幻冬舎 2017/11/29

お金2.0 新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book) - はてなキーワード

 

 タイトルは秀逸。なんとなく新しそうなのだけど説得力がない本。編集者(幻冬舎)に問題があるのか、話が満載だけど脈絡がない。ビットコインが色あせてしまった現在、本書のパースペクティブは少なくとも判断保留が妥当と思われる。
 「フェイスブック企業価値が1兆円程度(現在は50兆円)の時にも売上や利益はまだとても小さく、財務諸表から企業の価値を判断する金融の人たちからしたらとんでもない『バブル』だと言われていました。(中略)フェイスブックの最大の価値はユーザーのデータであり、これらを価値に換えていないだけでした。もしこういったユーザーの行動データも資産として企業価値に反映させることができれば、こういった認識のズレも生まれなかったはずです。金融の枠組みはどんどん現実世界の価値を正しく認識できなくなっています。」(160ページ)じゃあ、どうするの?ということだ。著者は「内面的な価値」が重視される、納得して自分のやりたいことをやるのが幸福と説くが、一方で、自らの経済的成功を背景に置いているので、どうも詐欺師の台詞に聞こえてしまう。

台湾とは何か (ちくま新書) 野嶋剛 筑摩書房 2016/05/09

台湾とは何か (ちくま新書) - はてなキーワード

from

銀輪の巨人 野嶋 剛 東洋経済新報社 2012/6/1 - いもづる読書日記

タイワニーズ 故郷喪失者の物語 野嶋剛 小学館 2018/06/08 - いもづる読書日記


 野嶋剛三冊目。台湾政治のわかり難さは、本書のいたるところに現れるが、次の文章に代表される。「中華民国体制は本来、中国大陸も台湾もその領土に含まれることを前提としている。一方、中国側は、中華人民共和国的な『一つの中国』を掲げている。この点で中国は譲ることはないが、台湾が中華民国的な『一つの中国』を捨てないことは、逆に評価するようになっている。台湾独立こそが、中国にとっては、いま真っ先に抑え込む相手だからだ。」(183ページ)
 日本人にも、中国人にもノスタルジックな台湾。その不思議な存在感は微妙なバランスの上で実現している。このバランスを、多分、中華人民共和国は理解している。香港の返還式典において、ゴッド・セイヴ・ザ・クィーンでユニオンジャックが下がったあと、五星紅旗の掲揚を盛り上げた国歌(義勇軍進行曲)の身もふたもないパワフルさが思い出される。この中国というからっ風が台湾も日本も蹂躙していくのかと思うと、ある種痛快に感じないでもない。

アジアの中の日本―司馬遼太郎対話選集〈9〉 (文春文庫) 司馬遼太郎 文藝春秋 2006/11/01

アジアの中の日本―司馬遼太郎対話選集〈9〉 (文春文庫) - はてなキーワード

from

タイワニーズ 故郷喪失者の物語 野嶋剛 小学館 2018/06/08 - いもづる読書日記

「朝鮮 民族・歴史・文化」金 達寿著 岩波新書 1958 - いもづる読書日記

 

 アジアをテーマにした司馬遼太郎の対談集で、対談相手は桑原武夫陳舜臣開高健金達寿李御寧。解説は関川夏生。該博な知識と構想力に圧倒される。「で、日本はどうだったかと言うと、嘉永六年に蒸気船が来たとき、ああ、これを作ろうって三年後に薩摩と宇和島で作ってしまいますね。それは便利だからっていうより普遍性への憧れやね。それが技術の形になっているわけ。(中略)これが日本と中国の違いで、中国は自分の普遍性を持っていたために、近代化に時間がかかった。アラビア人はあと何年かかるかわからない。」(54ページ)
 儒教が朝鮮社会をしばり発展を妨げてきたと、金達寿が繰り返しているのが印象的だ。「朝鮮 民族・歴史・文化」では朝鮮史における下からの改革のダイナミズムを述べていたが、抑圧と反発のエネルギーが大きいことが朝鮮=韓国の特徴か。北朝鮮の体制もいつかは転覆されるのかもしれない。

安井かずみがいた時代 島崎今日子 2015/03/20

安井かずみがいた時代 (集英社文庫) - はてなキーワード

FROM ジョン・レノンに恋して - はてなキーワード

TO 加藤和彦 あの素晴しい音をもう一度 (文藝別冊)  2010/2/23

 稀代の作詞家でファッションアイコンでもあった安井かずみの評伝。章ごとにゆかりの人物への取材と代表作をあわせ、多面的な人物の全体像を描くことに成功している。「自由な女」だった前半生と、加藤和彦と結婚し「理想の夫婦像」を提示した後半生が対になっているようだ。
 前半生を彩る自由な戦後文化は、高度成長と、欧米との文化格差に裏うちされたものだ。こうした幸福な享楽性はもはやどこにも存在しえない。私は吉田拓郎の章を最も興味深く読んだが、広島出身の吉田が70年代の安井が既に時代遅れだったと喝破している。つまり、張り子の虎だった東京文化が、ロック世代のより内発的な表現によって陳腐化される過程が物語られていると私には思える。「幸福な結婚」とは、本来、ロック的(サディスティック・ミカバンド)であった加藤和彦の表現が安井的な装飾を得ることで、高級そうでありながら自らの本質から離れたもの(ヨーロッパ三部作)へと変化する過程であったと云えそうだ。シンシア・レノンが「ジョンはミミおばさんに支配されて育ったので、ヨーコに抑圧される生活に戻って行った(大意)」と書いたことを思い出した。(読んだのは2013年刊の単行本)

学校で教えてくれない音楽 (岩波新書) 大友良英 岩波書店 2014/12/20

学校で教えてくれない音楽 (岩波新書) - はてなキーワード

from

ぼくはこんな音楽を聴いて育った 大友良英 筑摩書房 2017/09/11 - いもづる読書日記

to

ことばと国家 (岩波新書) - はてなキーワード

 大友さんの文章にふれる機会も少なくはなく、音遊びの会のテレビなんかも見たので、新しい発見は少なかったかもしれない。最近、Phewさんにすごく興味があるので、このへんがつながっていることが、なんだか嬉しかった。一番啓発されたのは「あとがき」かもしれない。田中克彦「ことばと国家」を読んでみたくなった。