「掘った、考えた」 大塚初重、鶴原徹也著 中央公論新社 2016年

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 大塚初重氏は明治大学名誉教授で考古学者、聞き書きなので読みやすい。1926年生まれで戦争にも行かれたそうで、前半は自伝的な内容になっている。ご専門の古墳自体については「弥生時代の方形周溝墓が派生し、その後、墳丘が高くなって前方後方墳が出現したと言える。前方後方墳は日本の古墳出現期の墳墓だ、と私は考えます。」(119ページ)と明快に述べられてます。
 3年ほど前、いわゆる旧石器捏造事件にかかわる「石の虚塔」、「考古学崩壊」を読んでいたのだが、著者は事件とのかかわりが深い芹沢長介東北大学名誉教授と同門だったこともあり、含蓄の深い言葉を寄せている。「1960年以降の国土開発で新幹線・鉄道・高速道路が敷かれ、工業団地・ニュータウンが次々に造成されます。工事で遺跡が出てくる。遺跡の資料を保存・記録するために緊急発掘し、その後、遺跡を壊して開発を再開する。」(175ページ)「考古学の新事実が続々出てきます。マスコミがやってくる。『最古』『最大』『最初』という言葉が躍ります。(中略)考古学者がチヤホヤされ、拍手喝さいを浴びる。次第に考古学者が溺れる。おごるんですね。それがあの藤村氏を生んだ。」(175ページ)