バブル:日本迷走の原点 永野健二 新潮社 2016/11/18

バブル:日本迷走の原点 - はてなキーワード

 

 私は自他ともに認める経済音痴なのだが面白く読んだ。事件史のような形式で一章が比較的短くテンポが良い。やや掘り下げが足りなく感じるがそれでこのボリュームなのだから、マテリアルが豊富で大きなテーマだということだろう。私はバブル期を体験しているのだが、書かれている事件の半分以上を知らなかったし、残りも皮相的な理解しかしていなかったことを感じた。それでもバブルが日本人の心性を変えたというテーゼは首肯せざるを得ない。日本の歴史におけるバブルの位置づけについて、より思弁的なアプローチが期待される。
 著者はNTT株上場フィーバーに触れ次のように述べる。「バブルは資本主義のエネルギーを増殖する。そして資本主義は、その功罪を運動のなかに巻き込みながら、深化し発展していくものなのである。」(124ページ)あまり賛成できないが至言と思う。この直感的な言葉を是非論証してみてほしい。