倭国の時代 岡田英弘 筑摩書房 2009/02/01

倭国の時代 (ちくま文庫) - はてなキーワード

From 対話 起源論 岸田秀 新書館 1998/07/03 - いもづる読書日記

To 日本史の誕生―千三百年前の外圧が日本を作った (ちくま文庫) - はてなキーワード

最近の私の古代史マイブームを中閉めした本である。著者は中国史の専門家だが、魏志倭人伝古事記日本書紀の成立経緯や史料的信頼性から見事な歴史像を描き出す。魏志倭人伝卑弥呼の魏の武将司馬懿への朝貢を描くことが目的、倭国の位置や政情は信頼できるものではない。日本書紀天武天皇の唯一の正皇后を自任し、一粒種の草壁の王子に皇位を継がせようとした持統天皇の父子相続イデオロギーを正当化するのが目的。古事記日本書紀から100年余りも後の平安時代に書かれた偽書。と、切れ味よく切ってすてられる。

 

初代の天皇仁徳天皇で彼の拓いた河内王朝は播磨王朝、越前王朝(継体天皇)にとって代わられる。また、これ以降も政権の変化は朝鮮半島の政情の強い影響を受けている。ことに、「660年に唐・新羅の連合軍が百済を滅ぼすと(中略)663年の白村江の戦いで、倭・百済連合軍は全滅し(中略)大量の亡命者が倭国に流れ込んだ」(351ページ)が、この翌年(辛酉の年)が日本成立の年と、日本書紀の編纂に関係した人々は暗示している。極めて明快である。


明快な本というのは警戒しなくてはいけないと思っている。だが、本書が私にとって里程標となったことは事実である。