路地の子 上原善広 新潮社 2017/06/16

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from 一投に賭ける 溝口和洋、最後の無頼派アスリート 上原善広 角川書店 2016/07/01 - いもづる読書日記

「エレクトラ―中上健次の生涯」 高山 文彦著 文藝春秋社 2007.11 - いもづる読書日記

 

 上原善弘は中上健次にならって被差別部落を路地と呼ぶ。本書は著者の作品の中で最も中上健次からの影響が強い。なにしろ「上原龍造」である。「音羽のヒデという若者は、博徒で鳴らした男で、気風がよいので路地では知られていた。龍造も通りすがりに、小銭をもらったことがある。しかしひと月前、ヒデは飛田での抗争に巻き込まれ、ピストルで撃たれて死んでいた。『ここの極道はだいたい、飛田の支店や、だから、ええように使われて死ぬのがオチや。生き残っても体ボロボロになる。だから龍ちゃんは人に使われるようになったらあかんで。』」(45ページ)。「千年の愉楽」かと思う。そういう意味ではそれなりの雰囲気を提示することには成功している。末尾に「自伝的ノンフィクション」と謳っているわりに、内容の多くはフィクションらしいが、それでも構わないと私は思う。ただ、全体に竜頭蛇尾だし、自家撞着的な「おわりに」は噴飯ものだ。ギリシャ悲劇というよりは中二病の述懐だ。結局、中上健次の出来の悪いパロディという位置づけが相応しいかと思う。自分の父親という貴重な題材なのに(だから?)、うまく料理できなかったか。好きな作家だっただけに残念だ。