タイワニーズ 故郷喪失者の物語 野嶋剛 小学館 2018/06/08

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銀輪の巨人 野嶋 剛 東洋経済新報社 2012/6/1 - いもづる読書日記

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台湾とは何か (ちくま新書) - はてなキーワード

 

 台湾は元々住んでいる人々(内省人)と大陸からやってきた国民党関係者(外省人)がおり、中華人民共和国との関係を含めて様々な政治的な立場がある。内省人も一枚岩ではなく、台湾に定住した時期やエスニシティに応じて一概には語れない。本書は日本で活躍する/した台湾出身者(タイワニーズ)を紹介することで、複雑な台湾社会を映し出そうとしたもの。
 11人の登場人物のうち、陳舜臣の生涯が興味深かった。1924年に台湾出身の父の子として神戸に生まれる。1946年に台湾にわたり、1947年の二・二八事件に逢い、1949年に日本に戻る。想像もできない過酷な体験だっただろう。その後、作家となったが、上記国民党の民衆弾圧も題材としたため台湾にわたることはできなくなった。1973年に中華人民共和国籍を取得するが、1989年の天安門事件を公式に批判し同国籍を放棄。「陳舜臣は、一度は心を許しかけた中華人民共和国に対する急転直下の失望によって、3度目の『祖国喪失』を経験した、と言えるだろう。」(254ページ)「陳舜臣の口からは、国家や権力に対するシニカルな言葉は語られていない。それは、(中略)権力を否定することよりは、権力の生み出す物語に自らの執筆の意義を見出したのかもしれない。(中略)『勝ち負けより、負けた時に何をするかが大事だ。』」(259ページ)