分かちあう心の進化 (岩波科学ライブラリー) 松沢哲郎 岩波書店

分かちあう心の進化 (岩波科学ライブラリー) - はてなキーワード

from

サル学の現在 - はてなキーワード

 あの有名なチンパンジー、アイちゃんの研究をされた方。今西錦二流のサル学ではなく、心理学をベースとした、ヒトと他の動物の認知を比較する「比較認知心理学」を研究してこられた。とはいえ、京大山岳部のご出身でもあるようなので、このへんの伝統は根強い。「チンパンジー研究を通じて、自分なりに感得した4つの仮説があります。『人間の進化の過程で4つの手から2本の足ができた』、『あかんぼうのとるあおむけの姿勢が人間を進化させた』、『チンパンジー流の教えない教育・見習う学習』、『瞬間記憶と言語のトレードオフ仮説』です。」(205ページ)それぞれとても興味深いが4つ目の点だけ紹介する。コンピュータ画面に表示される数字を瞬時におぼえる課題では、チンパンジーが人間より優れた能力を示す。著者は人間が言語を獲得することで瞬間記憶能力を手放したと考える。ここからは私見だけど、視覚と聴覚の統合による内部イメージの形成が人間の抽象化能力の源泉だと思う。目や耳の形を見ると、視覚、聴覚の入力はサルもヒトもかわらないと思うが、チンパンジーには内部イメージがないのだろうか。本書は、情報を言語的に分節化することがヒトとチンパンジーをわけていると読めるが、内部イメージを参照することが、ヒトの情報処理が時間がかかることの本質ではないだろうか。(検証するためにはどんな実験をすればいいの?)