台湾とは何か (ちくま新書) 野嶋剛 筑摩書房 2016/05/09

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 野嶋剛三冊目。台湾政治のわかり難さは、本書のいたるところに現れるが、次の文章に代表される。「中華民国体制は本来、中国大陸も台湾もその領土に含まれることを前提としている。一方、中国側は、中華人民共和国的な『一つの中国』を掲げている。この点で中国は譲ることはないが、台湾が中華民国的な『一つの中国』を捨てないことは、逆に評価するようになっている。台湾独立こそが、中国にとっては、いま真っ先に抑え込む相手だからだ。」(183ページ)
 日本人にも、中国人にもノスタルジックな台湾。その不思議な存在感は微妙なバランスの上で実現している。このバランスを、多分、中華人民共和国は理解している。香港の返還式典において、ゴッド・セイヴ・ザ・クィーンでユニオンジャックが下がったあと、五星紅旗の掲揚を盛り上げた国歌(義勇軍進行曲)の身もふたもないパワフルさが思い出される。この中国というからっ風が台湾も日本も蹂躙していくのかと思うと、ある種痛快に感じないでもない。