沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史 佐野眞一 集英社インターナショナル 2008/09/26

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 沖縄の裏面史を描いた怪著。戦争、基地、暴力、犯罪、売春等々おどろおどろしいテーマが並ぶ、縁日の芝居小屋のような世界が展開する。沖縄が一つの装置として働いてきた奇妙な歴史が垣間見えてくる。
 興味深かったのは、占領下の1958年に米軍の軍票(B円)がドルに切り替えられた経緯を述べた下記の記述。「もう一つ重要なポイントは、ドル通貨に切り替えると同時に、沖縄の貿易を完全に自由化したことです。(中略)日本国内ではまだ高嶺の花だったジョニ赤なんか、一ドルで飲める。つまり沖縄は、本土より十年も早く消費生活に突入したんです。」(433ページ)これが沖縄に、県民所得が日本最低であるにもかかわらず、”豊かさ”が感じられる理由であろうと述べる。人間の欲を主軸にした沖縄経済のダイナミズムが、この島を欠くべからざる装置にしている原動力であろう。
 一方、エンターテイメントを扱った「踊る琉球、歌う沖縄」の章は物足りなかった。喜納昌吉竹中労の評価がやや控えめなのは、沖縄人の視点を大切にしたが故か?「ハイサイおじさん」ショックは内地のポピュラー音楽のありかたを変えたといってもいい。久保田真琴細野晴臣中川敬へのインタビューがあってしかるべきだったと思う。人間を語るな、音楽を語れ、と思います。
 昨年、初めて訪沖した際、牧志公設市場のリニューアルについて聞かされた。消えゆく猥雑な沖縄の残滓に触れることが出来て良かったか。しかし矛盾は矛盾として厳然と存在する。