丹羽宇一郎 習近平の大問題: 不毛な議論は終わった。丹羽宇一郎 東洋経済新報社 2018/12/14

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丹羽宇一郎 戦争の大問題 丹羽宇一郎 東洋経済新報社 2017/08/04 - いもづる読書日記

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習近平はいったい何を考えているのか 新・中国の大問題 (PHP新書) - はてなキーワード

丹羽宇一郎 戦争の大問題」のシリーズ。中国大使だった著者の経験を踏まえた習近平論、中国論。豊富なデータを引用して説得力のある本だとは思うが、主張は非常に穏当で平明。習近平が最も力を入れているのが反腐敗運動であり(59ページ)、これを貫徹するために自らの任期も終身とした(45ページ)、これを可能にしたのは強い国民からの支持である(39ページ)。AIIBや一帯一路は膨張主義ではなく経済発展による世界平和の実現(136ページ)。我々にとって中国は明らかに異質で、情報が限られているがゆえ脅威に感じられるのは自然なことではないかと思う。しかし、今回初めて中国に行って感じたことも多かったので、ましてや大使であった著者の主張は耳を傾けるべきなのであろう。
「アジアの中の日本」にもあったように、中国はかつて世界帝国であった。自らの論理で周辺世界を支配する経験を持った国だ。「中国は自らの普遍性を持っていたから近代化に時間がかかった」わけだが、今も自らの普遍性を創造して巨大国家を運営しようとしていると思われる。世界標準と同じか違うかなどど考えない。隣の顔色など見ないのだ。中国の内向きの情報統制はすさまじく、ネット時代のヘゲモニーを取ろうとしているという観測は外れていないだろう。著者は「日本人には、中国人のことがわかる。少なくともアメリカ人よりはわかるはずだ」(144ページ)と書くが、果たしてそうだろうか。我々の知っている中国的な知性は国民党の敗北とともに消え去ったのではないのか?今の荒々しい中国は何者なのか?上記したIT戦略を我々は理解できるだろうか?
こんな妄想をしている。中国には十倍の人口がある。全ての国に一定の割合で優秀な人材があり(石原慎太郎はそう考えないだろうが)、十分な教育が与えられるとして、中国は日本の十倍の人材がいる。彼らはその才能に見合った待遇が得られず、強いモーチベーションで自己実現を目指している。これは米国の理科系の学界を見れば容易に予想される。ここからは想像だが、その優秀な人材の中核には、日本のスケールでは見られないさらに優秀な層がいるのかもしれない。十倍優秀かはわからないが。これが人口十倍のスケールメリットだ。本当に日本人に中国人が理解できるのだろうか?