倭の五王 王位継承と五世紀の東アジア 中公新書2470 中央公論新社 2018.1河内春人著

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古代日本 謎の四世紀 上垣外憲一 学生社 2011/03/01 - いもづる読書日記

倭の五王とは宋書倭国伝に登場する五世紀の倭王、讃、珍、済、興、武のこと。本書はあえて、この五王が記・紀のどの天皇にあたるか比定を急がず、中国、韓国の文書に現れる倭王とその背景を丁寧に解きほぐしていく。著者はこの時期の倭が、古市古墳群百舌鳥古墳群に象徴される少なくとも三つ以上の勢力で構成され、統一国家ではなかったと考える。そのため、記・紀にある天皇の実在性についてもカッコに入れ、比定の研究史を紹介するにとどめている。
ちょっと面白いのは、応神天皇がこの支配グループの始祖であると述べた箇所である。すなわち、継体天皇は自分の正当性を主張する根拠として、自分が応神天皇の子孫であるというロジックを採用している。つまり応神天皇がグループの始祖である事実は受け入れられていたことになる。著者はこの理由として、応神天皇百済から、馬、剣、鏡を贈られたという古事記の記述に着目する。「百済との外交開始こそがホムタワケ(応神天皇)を始祖の地位へ押し上げたと考えることもできるだろう。」(197ページ)当時の治世が半島との関係と不可分であったことの証左である。