良い加減に生きる 歌いながら考える深層心理 講談社現代新書 きたやまおさむ 前田重治 2019年05月15日

『良い加減に生きる 歌いながら考える深層心理』(きたやま おさむ,前田 重治):講談社現代新書|講談社BOOK倶楽部

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安井かずみがいた時代 島崎今日子 2015/03/20 - いもづる読書日記

加藤和彦について考えるために。著者は加藤とフォーク・クルセダーズで活躍したのち、精神科医となり九州大学教授。本書はきたやまが作詞した歌の数々を俎上にあげ、前田(きたやまの同僚だった精神科医)ときたやまの往復書簡のような形で展開される。
加藤の自死はこの本のテーマで、例えば「早く逝こうとする君」という鎮魂歌を紹介しながら、自分の感情に決着をつけるように振り返る。「彼が亡くなったあと、彼のスタジオへ行ってみたら、1967年のアマチュア時代の解散コンサートの写真が一枚、残されていました。(中略)あの写真は、あのアマチュア時代に戻りたかったというメッセージだったのでしょう。」(132ページ)しかし、これは著者や加藤の成し遂げてきたことに対する矮小化ではないのか?
先日NHK-FMで放送された「ニッポンロック50年」で、萩原健太はサディスティック・ミカバンドの「タイムマシンにお願い」を第一曲目に選んだ。加藤はこうした爆発力を持つミュージシャンだった。その彼が「おしゃれ」なペダントリーに絡めとられていったのが残念だ。