ファーウェイと米中5G戦争 講談社+α新書 近藤 大介 2019年07月20日

『ファーウェイと米中5G戦争』(近藤 大介):講談社+α新書|講談社BOOK倶楽部

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新型コロナ禍で図書館も休みになり、積読になっていた購入書を読み始めている。「現代ビジネス」にもよく登場する近藤氏の著書。新書のパッケージにふさわしい、コンパクトだが充実したよい本だった。
本書は、勃興する中国製造業のフロントランナーであるファーウェイに取材し、その若々しい開発力を紹介している。ファーウェイはスマートフォンや通信機器の世界トップメーカーで、通信規格が5Gへと移行しようとする現代、そのヘゲモニーを握ろうとしている。この現状に危機感を持った米政府は、2019年5月15日(本書が出版される2か月前)に同社をアメリカ企業との取引から排除することを決定した。ファーウェイの発展は中国政府のバックアップと世界戦略があることは当然だが、製品の製造はホンハイなど台湾企業との関係がとりわけ重要で、中国の対台湾政策の流動性が影を落としている(かもしれない)。
著者は本書をこのように締めくくっている。「『米中新冷戦』が終息するのは、AIがコントロール不能なほど発達したときになるのかもしれない。だがそんなときに和解しても『時すでに遅し』ではなかろうか。」(221ページ)ファーウェイの任正非CEOは「中国の古代哲学は玄学(非可視的学問)であり、西洋の哲学は形而上学唯物論だ。これまで西洋哲学に裏付けられた科学が世界を支配した。だが今後はVR(仮想現実)などで玄学の世界、中国の世界が到来するのだ。」と自信を見せている。現代の中国が「古の伝統とは断絶した精神的貧困の中」に居るというのは石平氏の言だが、4000年の歴史に裏打ちされた文化的な基礎体力は侮れないに違いない。