スペインの宇宙食 小学館文庫 菊地成孔 2009/4/7

スペインの宇宙食 | 小学館

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サカナとヤクザ: 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う 鈴木智彦 小学館 2018/10/11 - いもづる読書日記

ぼくはこんな音楽を聴いて育った 大友良英 筑摩書房 2017/09/11 - いもづる読書日記

「新型コロナ禍で図書館がクローズし、買ったけど読んでなかった本を読んでいる」というと著者の逆鱗に触れてしまいそうだが、とても非日常的な本なのである意味時宜を得ているかと。そういえば、夜電波が終わってもう一年経つのかと本書「文庫版あとがきにかえて」の1,000倍くらい薄めの感慨にひたる。本書の基調音は第2期スパンクハッピーの躁病的な大活躍であるわけだが、どこまでがマーケティングなのか本人にもわからない虚実を綯い交た饒舌が、刹那を駆け抜けるジャズミュージシャンに相応しい。この機会に菊地の音源を拾い聞きしてみる。ポスト打ち込み時代というか、テクノロジーによって自由になった分、呆然とせざるを得ない音楽界の「最先端」に居ることがわかる。例えば本書にもなんどか登場する大友良英、菊地が書く通り本質的にはパンクである彼が編曲家として時代とシンクロしていることが、現代のジャズミュージシャンの役割を指し示している。テクノロジーと肉体性の相克ということだ。本書は菊地がかつて持っていた「過剰」を指し示しているが、果たして彼は怪物を飼い慣らしたのか。