韓国はなぜキリスト教国になったか 鈴木 崇巨 著 春秋社 2012/09/30

韓国はなぜキリスト教国になったか - 春秋社 ―考える愉しさを、いつまでも

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ふしぎなキリスト教 講談社現代新書 橋爪大三郎 大澤真幸 2011年05月18日 - いもづる読書日記

韓国は本書が発行された2012年の時点で人口の35.7%がキリスト教徒で占められる。これに対し日本の場合は0.88%と好対照である。本書は日本人でありながら韓国系の教会に通ったこともある牧師さんが、この謎に立ち向かった本。前半部は韓国とそのキリスト教徒が辿った歴史が概括される。日本の3.1独立運動弾圧で行った行為には胸が痛んだ。
著者は韓国でキリスト教が隆盛した理由を下記のように挙げる。1キリスト教という宗教そのものが韓国の人々をひきつけた、2純粋な心を持った韓国人の民族性がキリスト教に合致した、3殉教の歴史から来るキリスト教への国民の信頼があった(106ページ)。2は嫌韓流の跋扈する現在の日本人の(荒廃した)精神からは捉えにくい。韓国人の信仰は確かに心の奥底から出てくるもので、日本人の信仰は「ファッション」の域を出ないのかもしれない。著者は日本で福音宣教が実を結ばなかった理由として、「クリスチャンを含めた日本人が島国的劣等感の束縛から解放されていない」ことを挙げている(201ページ)。
私は韓国人の心性は短歌的、現代の日本人は俳句的という感じを持った。理性的、客観的な現代日本人の心性は、悪く見ると冷笑的で不誠実ととらえられるかもしれない。それこそ従軍慰安婦の方にダイレクトに謝ることをしない「立場主義」は、純粋な韓国の方々にはなかなか理解してもらえないし、国際標準から見ても受け入れられない。これは、戦後日本人の屈折の結果かもしれない。戦前の日本人は少なくとも我々よりエモーショナル=短歌的ではあったと思う。韓国は日本人が見ようとしない自らの姿を映す鏡であると思った。