アルツハイマー征服 下山進 KADOKAWA 2021年01月08日

「アルツハイマー征服」 下山 進[ノンフィクション] - KADOKAWA

アルツハイマー病(AD)研究の歴史と製薬という仕事を知るには有用であり、読み物としても面白かった。前半は分子生物学的なAD研究とアリセプト(ドネペジル塩酸塩)の開発史が、後半は創薬ベンチャーの興亡と抗体医薬の開発が並行して展開する。ただ、6月にFDAにってアデュカヌマブ(ADUHELM)が承認されたわけだが、本書を読んでシンプルにADが征服されたのだと感じる人はどれほどいるのだろう?本書は遺伝子変異が明らかな家族性ADにフォーカスしており、大多数の孤発性ADについては、治療をどのように始めてよいのかも解らないという現状だ。そのあたり、Nature誌もFDAの姿勢を批判していた。本書は率直に言ってミスリーディングだと思うし、著者に加担した研究者も反省するべきだろう。