倭王と古墳の謎―ヤマトの東国・九州・東アジア (天理大学の古代史教室) 近江昌司 高野政昭 日野宏 桑原久男 竹谷俊夫 學生社 (1994年10月1日発売)

『倭王と古墳の謎―ヤマトの東国・九州・東アジア (天理大学の古代史教室)』(近江昌司)の感想 - ブクログ

FROM

倭の五王 王位継承と五世紀の東アジア 中公新書2470 中央公論新社 2018.1河内春人著 - いもづる読書日記

アジアの中の日本―司馬遼太郎対話選集〈9〉 (文春文庫) 司馬遼太郎 文藝春秋 2006/11/01 - いもづる読書日記

韓国からみた古代日本 (古代の日本と韓国) 學生社 1990/8/1 - いもづる読書日記

天理大学古代史講座を出版したもの。「古代の日本と韓国」シリーズとおなじ學生社の作本が好ましい。本書は宋書梁書にあらわれる倭王武、ワカタケル王、雄略天皇の時代を多方面から描く。「大陸式葬制の影響をうけて出現する、横穴式古墳の成立過程(山内)、(中略)雄略天皇の宮都シキ・アサクラの遺跡についての観察(高野)、(中略)稲荷山古墳の諸問題(日野)、倭の半島進出を遺跡遺物の考察からは、その実態をどのようにとらえることが出来るであろうか(竹谷)、倭王の遣使が渡った、中国南朝の文化摂取や交流のあとは、どのように辿れるのであろうか(桑原)」(はしがき)。
この時代の史実をたどるのにも宋書梁書が第一級資料であることがもどかしい。日本書紀は中国の史書に比するものを目指したと考えるが、司馬遼太郎の語る「普遍性」の希求が乏しく、あてにならない。宮内庁天皇陵、陵墓候補地の発掘を認めず、正当な歴史の解明を拒んでいるかのようだ。「考古学のほうでは、四世紀というのは、空白どころか非常に重要な時期で、奈良県を中心に巨大な前方後円墳が次々に築かれていったことがわかっています。各地方に同じような形と内容を持った古墳が広がっていくことから、日本列島も、朝鮮半島と同じように、一つの国家が形成される時期であったことがわかります。」(171ページ)こうした事実は天皇陵、陵墓候補地以外の調査に基づいたものだ。こうした、科学的な調査による自分たちの来し方の再構築こそが、現代日本人の精神分析にも必要なことではないだろうか?