アカデミアを離れてみたら 博士、道なき道をゆく 岩波書店編集部編 岩波書店 2021/08/04

アカデミアを離れてみたら - 岩波書店

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博士漂流時代 榎木英介著 ディスカバー・サイエンス 2010/11/15、高学歴ワーキングプア「フリーター生産工場」としての大学院 水月昭道著 光文社新書 2007/10/16 - いもづる読書日記

イノベーションはなぜ途絶えたか: 科学立国日本の危機 (ちくま新書1222) 山口栄一 筑摩書房 2016/12/06 - いもづる読書日記

大学などアカデミックな職にあった方々が、民間企業などへ転職する体験記。こんな本が成り立つことが、そうした事例の希少さを物語っている。大学院重点化やポスドク一万人計画で増え、行き先を失いワーキングプア化した人材が、アカデミア一辺倒で硬直化した頭を少し柔軟にしてみましょうよ、民間に行くのも悪くないよと説いた本といえるか。大学教員を辞めて起業した山根承子さんの「『とりあえず行動する』のすすめ」に勇気をもらった。退職日をフィックスするためにとりあえず大学を辞め、行く先はそれから探すというのはよほどの覚悟がないとできないが、とりあえず動くことで回りに波紋が生じるのがダイナミック。このバイタリティが極めてポジティブだ。
コロナ禍以来、政治もメディアもサイエンティフィックでないことに辟易しているが、では、自分はどこまでサイエンティフィックだろう?日本は科学者、博士が尊重されない社会であるという実感はある。これはおそらく、巷間言われる生産性の低さと関連があるだろう。簡単な解決策などないと思うが、新自由主義的ではない「ダイナミズム」が改革の原動力ではないかと夢想する。