どうしてこうなっちゃったか 藤倉大著 幻冬舎 2022/01/26

どうしてこうなっちゃったか | 株式会社 幻冬舎

FROM

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2 ブレイディみかこ著 新潮社 2021/09/16 - いもづる読書日記

アメリカ音楽の新しい地図 大和田俊之著 筑摩書房 2021/12/23 - いもづる読書日記

未聴の宇宙、作曲の冒険 湯浅譲二 西村朗 著 春秋社 2008/11/20 - いもづる読書日記

梅田望夫という人が将棋の観戦記などに携わっていたことがあって、その中で、渡辺明名人が優秀なIT開発者とよく似た感触を持っていると書かれていた記憶がある。曰く頭の回転が速く、早口、予め結論が出ていて悩まない、ようなことだったような気がする。本書は現代版「ボクの音楽武者修行」なのかもしれないが、イギリスの高校に留学するあたりは音楽版「ぼくイエ」みたいな感触がある。なんだかお金の話ばかりが出てくる感じもあり、新自由主義によくアダプトした作曲家みたいな感想もあろうかと思うけど、むしろ冒頭にのべたクロック周波数が早すぎる人なのかもしれない。
著者はメロディについてこんな風に語っている。「音楽史の最大の悲劇は、第2次世界大戦だ。戦争中、ナチスリヒャルト・ワーグナーの音楽をプロバガンダ映画や集会で流した。国民を洗脳するためにだ。(中略)それで、第2次世界大戦中に10代20代の青年期を過ごしたシュトックハウゼンブーレーズなどが、『聴衆を音楽で洗脳しない音楽を作ろう』という前衛運動を始めたといっても過言ではないだろう。(中略)つまり現代の作曲家にとって、メロディとは『普通に歌える、いいメロディに乗っけて盛り上がる音楽、書けばいいんちゃうの?』というわけにはいかない、大きく悩ましいトピックなのである。」(266ページ)著者の音楽は断片的にしか知らないが、音の定位に敏感な人なのではないかと思う。これは感性とともに、「DAWが普及した現代ならでは」のような評価もあり得る。その意味では当初は電子音楽にまったく興味がなかった(301ページ)というのは興味深かった。

ブライアン・イーノなんかはお嫌いなんでしょうね?