プリーズ・キル・ミー Garageland Jam Books レッグス・マクニール著 メディア総合研究所 2007.9

プリーズ・キル・ミー アメリカン・パンク・ヒストリー無修正証言集 | ele-king

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僕の樹には誰もいない 松村雄策 河出書房新社 2022.10.26 - いもづる読書日記

子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から ブレイディみかこ みすず書房 2017年4月17日 - いもづる読書日記

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ザ・レインコーツ──普通の女たちの静かなポスト・パンク革命 | ele-king

1/28にテレビジョンのトム・ヴァーレインが亡くなったので時宜を得た読書となった。「パンク」という雑誌をやっていたライターが、当時の関係者の発言のみでニューヨークパンクの実態を描いた労作。まさに、セックス・ドラッグズ・アンド・ロックンロールである。ヴェルベット、アンダーグラウンド、ストゥージーズ、MC5ニューヨーク・ドールズパティ・スミスラモーンズ、テレビジョン、ブロンディと展開するニューヨークパンクが、イギリスに伝播して爆発するダイナミズムが描かれている。ジェームズ・チャンスは出てくるけど、リディア・ランチは出てこない、アート・リンゼイも出てこない、そういえばデヴィッド・バーンもほとんど出てこないという点がちょっと不満か。
なんだか渋谷陽一大権現みたいで嫌なんだけど、氏の「ビートルズ穴ぼこ説」というのがある。60年代初頭のイギリスにロックンロールの需要にかなうアーティストがいない、空白というか穴ぼこがあって、そこにビートルズが上手くはまったという説。イギリスでのパンク・ロックの隆盛にも、大きな穴ぼこがあったことが見て取れる。「1976年ロンドンのあの秋、世界が動き出したってはっきり感じ取れたわ。ニューヨークでジョークとしてはじまったものが、イギリスのもっと若くて、もっと危ないオーディエンスによって本物になったんだと思った。(中略)『パンク』マガジンのTシャツ着てたら、みんながわっと押し寄せてきたのよ。(中略)『パンク』って書いてあるTシャツ着ているだけで、みんなものすごく興奮したのよ。」(306ページ)
「パンクはロックの自浄作用だった」と書いたけど、海の向こうのリスナーである私にとって本書はちょっとお腹いっぱい。パンクの幼児性はポストパンクのDIY精神につながって行くと考えるが、パンクを経ているか否かが踏み絵にはならないだろう。というわけで、次のレインコーツに進みたい。