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古代技術の復権 森浩一対談集 森浩一編 小学館ライブラリー(1994/08発売) - いもづる読書日記
日本の国内で鉄の生産が開始した時期については弥生時代後期説と古墳時代後期説があり、著者は前者を採っているとのこと。説が分かれるのは、遺構が鉄素材の加工を行なっていたのか、製鉄から行なっていたのか判断が難しいことによるようだ。「弥生時代後期にはそれまで工具・農具として一般に使用されていた大陸系磨製石器が一斉に消滅し、代わって鉄製の工具や農具が普及してくる。それは、中国大陸や朝鮮半島方面からの鉄器の流入だけではなく、列島内でも製鉄が行われていたため、これだけのスピードで鉄器化が進んだと考える。」(106ページ)
「人工鉄には大きく分けて鋼と鋳鉄の二種類が存在し、その差は含まれる炭素量による。鋼には含まれる炭素が0.02%〜0.2%の低酸素の錬鉄あるいは鍛鉄と、炭素含有量が0.3%〜2.1%の中・高炭素の鋼鉄がある。一方、鋳鉄(銑鉄)は炭素含有量が2.1%〜6.7%(平均3%程度)である。鉄は炭素量が少ないと軟らかいが粘り強くなり、炭素量が多いと硬いが脆くなる性質がある。」(19ページ)現代人は化学をベースに考えられるが、近代以前の人々は手探りで技術を発展させてきたと考えると感慨深い。