ヒトはこうして増えてきた: 20万年の人口変遷史 (新潮選書) 大塚柳太郎 新潮社 2015/07/24

ヒトはこうして増えてきた: 20万年の人口変遷史 (新潮選書) - はてなキーワード

 

まえがきから。「出生、死亡、移動に着目してヒトの歴史を見直すと、四つのフェーズに大別できます。第一フェーズは、ヒトが誕生の地アフリカの中で人口を穏やかに増した時期です。第二フェーズは、ヒトの祖先たちがアフリカ大陸から西アジアへ、そして地球の広域へ移住した時期です。第三フェーズは、ヒトが定住生活をはじめ、その後に農耕と家畜飼育を発明し、自然界の食物連鎖の制約から逸脱を開始した時期です。現在までつづく第四フェーズの引き金になったのは、ヨーロッパではじまった産業革命と人口転換です。人口転換とは出生率も死亡率も高い『多産多死』から死亡率だけが低下する『多産少子』を経て、最終的に出生率も低下する『少産少死』に移行することを指しています。」本書の1~4章に相当する第三フェーズまではよく描けていて、興味深い。本書の眼目である第四フェーズと将来像を題材とする第五章、最終章はデータを重視したせいか散漫で読みづらい。特に人口転換のメカニズムについて統一的な見解が述べられず、報文の紹介に終わっている感もある。中国の施策史も知りたいところだ。

 生物史的な意味、人類史的な意味を語って欲しいと思った。