隆明だもの ハルノ宵子 晶文社 2023年12月

隆明だもの | 晶文社

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文学と非文学の倫理 吉本隆明;江藤淳 中央公論新社 2011/10/22 - いもづる読書日記

吉本隆明全集の月報に長女のハルノが寄稿したエッセイをまとめたもの。ハルノと吉本ばななの姉妹対談、ハルノのインタビューも収録されている。吉本隆明の特異なキャラクターを知ることができる。「父の場合は、ちょっと特殊だった。簡単に言ってしまえば”中間”をすっ飛ばして『結論』が視える人だったのだ。無意識下で明確に見えている『結論』に向けて論理を構築していくのだから、”吉本理論”は強いに決まっている。けっこうズルい。」(56ページ)クールな分析である。"サイキック"であることが自明の一家でいらした。
吉本は1996年に海で溺れる事件を起こしている。「しかし父をあなどっていた。明日新聞のすみっこに、一介の物書きジジイが、西伊豆で溺れたと、小さく載る程度だと思っていた。ヘリは報道部長クラスが『よし、飛ばせ!』と言えば、すぐに飛んじゃうんだ。と、後に共同通信のI氏が言っていた。つまりは、そのクラスが皆”吉本世代”だったと言う訳だ。」(68ページ)「しかしこの夏の出来事は、大変大きな教訓になった。父が溺れた程度(?)で、こんな騒動になるとは、さすがに私も、想像だにしなかった。もしこれで、父が死んだりしたら、どの程度のことに、いつどんな順番で見舞われるのか、予備知識ができた。」(71ページ)その、典型的な吉本世代だった渋谷陽一が、昨年11月に突然病気療養に入ったことが報道され、3月末に本人不在のまま担当ラジオ番組が終了することが発表されたことを言い添えておく。時代は動いている。