電通とFIFA サッカーに群がる男たち 田崎健太 光文社新書 2016/2/18

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サッカーと人種差別 文春新書 陣野俊史 文藝春秋 2014/7/18 - いもづる読書日記

原発プロパガンダ - 岩波書店

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朝日新聞出版 最新刊行物:文庫:電通

電通が黎明期のスポーツビジネスに関わるに至った経緯を描いた本。電通の専務取締役にまで至った高橋治之という人物が主人公。J-リーグの発足や、日韓W杯、FIFAの贈収賄など裏面史が描かれる。「プラッターは高橋のことを、ワールドユースをプロデュースした男であると皆に紹介した。(中略)『電通ならば放送局の手配、スポンサーが喜ぶ露出ができる。我々に任せてくれればもっとちゃんとしたマーケティングをやりますよ。』」(83ページ)
高橋のような人物が活躍した背景に電通という会社の特徴がある。「田原総一郎は、八四年の著書『電通』(朝日文庫)の中で(電通とは個人商会の巨大集合体。電通マンの一人一人が仕掛け人で、仕掛け人たちが伸縮自在、まるでアミーバのようにくっついていてふくれあがったり、分裂したりする形で成り立っている企業)と定義した上で」(58ページ)
原発事故以降、その是非について十分な議論が行われたとは言えない現状に、電通を代表とする広告代理店が議論を封殺してきたことをその一因とする考えがある。東京電力が「スポンサー」である限り、その手足となるのが広告代理店の正義だろう。広告代理店はメディアを牛耳っており、メディアに載ってこない議論は実質的に存在しないも同じという状況に強い違和感を感じる。電通は一種の媒体で、社会がその存在を望んでいるという理解もあろうが、その肥大化した影響力が社会に悪影響をもたらしているという自覚はあるのだろうか?