差別と日本人 (角川oneテーマ21 A 100) 辛淑玉, 野中広務 角川グループパブリッシング 2009/06/10

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from 拉致と日本人 蓮池透, 辛淑玉 岩波書店 2017/06/28 - いもづる読書日記

 

 1/26に亡くなった野中広務辛淑玉の対談。対談の間に辛淑玉の文章がはさまる「拉致と日本人」と同じような構成だが、辛淑玉の対決姿勢、肩に力が入った感じはこちらの方がずっと強い。出版時点で野中は84歳、政界引退から6年、よくこんな対談をうけたものだと思う。
 野中広務の部落差別に対するスタンスは、自らの出自を明らかにしたうえでの「革新」の偽善性批判で、これは非常に有効だった。「1982年3月3日、水平社創立60周年の記念集会で、野中広務副知事は以下のようにコメントした。『全水創立から60年ののち、部落解放のための集会をひからなければならない今日の悲しい現実を、行政の一端をあずかる一人として心からお詫びします。私事ですが、私も部落に生まれた一人であります。私は部落民をダシにして利権あさりをしてみたり、あるいはそれによって政党の組織拡大の手段に使う人を憎みます。そういう活動を続けてるかぎり、部落解放は閉ざされ、差別の再生産がくりかえされていくのであります。』」(102ページ)本書の対談ではいかに血の通った政治を目指したかが語られる。vulnerableな部分に対する感受性の強さと発言の率直さが印象的だった。