電子立国は、なぜ凋落したか 西村吉雄著 2014/7/10 日経BP社

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イノベーションはなぜ途絶えたか: 科学立国日本の危機 (ちくま新書1222) 山口栄一 筑摩書房 2016/12/06 - いもづる読書日記

本書のメッセージは明確で、日本の半導体産業が凋落した原因を、設計と製造を分業できなかったことにもとめる。世界は半導体にしろ電化製品にしろ設計のみを行い、製造は専門会社(ファウンドリ)に任せる「ファブレス」が主流。日本の製造業は「垂直統合」にこだわり、設計と製造の分業を行うことができなかった。鴻海のような、製造技術に特化したファウンドリになることもできなかった。
「メーカーが自社工場をEMSに売却した場合を考えよう。メーカーが自社工場で製造していた製品を、同じ工場でEMSは製造し、メーカーに納品する。(中略)工場を売却したメーカーの資産は減少する。少ない資産で同じ利益を上げられたことになる。資産効率が上がったわけだ。株主は歓迎するだろう。(中略)バブル経済崩壊以前の日本企業の経営にはこうした資産圧縮の動機はなかった。(中略)日本企業は設備投資の資金を銀行からの借り入れに頼っていたからである。(中略)借入金による資金調達を支えたのは、メインバンク制である。」(164ページ)
かつて日本のDRAMが高く評価されたのは良品率が高かったからだそうだ。これは日本の品質管理体制に依るものだ。日本人の得意な重箱の隅をつつくような細心さが上手く働いた。そしてこの成功体験にこだわってしまった。大局を見ることができない、軌道修正が効かない日本人の特性は良く自覚するべきだ。