日本海軍はなぜ滅び、海上自衛隊はなぜ蘇ったのか 是本信義 幻冬舎 2005/10

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From 海の地政学──海軍提督が語る歴史と戦略 ジェイムズスタヴリディス 早川書房 2017/09/07 - いもづる読書日記

永田鉄山 昭和陸軍「運命の男」 (文春新書) 早坂隆 文藝春秋 2015/06/19 - いもづる読書日記

TO 逆説の軍事論 - はてなキーワード

 

 陸軍と海軍というのは違う目的を持った組織なのかもしれない。陸は生活の場だが多くの人にとって海は異界だ。海軍はシーレーンの確保が第一目的で、そのパワーをどう活かすかは政治の問題ということだろう。本書は旧海軍の問題点を指摘し、解体された海軍から海上自衛隊がどう再構成されていったかを語る。旧軍の悪弊を正し、米海軍の御指導の許、論理的で精緻な一級の海軍力を身に着けるに至ったかの成功物語?だ。
 というわけで、筆致はいかにも楽観的で批評に乏しい。「したがって、堂々たる軍隊の形をとってはいても、実際に運用する際の根拠となる法規の原点は、警察官職務執行法なのである。そして認められている権限は、『現行犯逮捕』と『正当防衛』、『緊急避難』の三つに過ぎない。(中略)確かに海上自衛隊は優れた防衛力を持っている。しかし法制上、それを使用する権限がなければ、文字どおり『宝の持ち腐れ』となってしまう。」(259ページ)正しい現状認識だろう。しかし、軍隊を正しく運営する方法を私たちは知らない。考えたこともない。自衛隊は警察官の延長で、いわば市民の延長であるのに過剰な武器を持たされた危険な存在と見ることもできるだろうし、宝の持ち腐れはすなわち単なる無駄遣いだ。自衛隊はおそらく米軍の一部であり、おもいやり予算同様我々が便宜供与しているに過ぎない。このため、私たちが軍事力の運営に必要な戦略、技術、法制度を欠いていてもさして問題にはならないわけだ。本書にも表れるように自衛隊の側にも自分たちが有事にのみ活用されるべき特殊な存在で、平時はあたかも存在しないように振舞うべきだという自制が欠けている。大日本帝国が罹患していた病理は軍隊の非論理性だけではなかった。議論があるべきだと思うのだが。