聖断 昭和天皇と鈴木貫太郎 (PHP文庫)半藤 一利 2006.8

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評伝田中清玄 昭和を陰で動かした男 大須賀瑞夫著 倉重篤郎編集 勉誠社 2017年2月 - いもづる読書日記

最近(2021.1.12)に亡くなった半藤一利の著書。鈴木貫太郎が"大人物"であったことが描かれるが、むしろ主人公は昭和天皇かもしれない。
「それは戦争を終結させるために、あえて憲法の運用上のルールを破ろうという緊急非常の手段であった。これまでの憲法のルールによれば、天皇には国家機関が決定することに拒否権はない。(中略)だが、そのルールを破り、大元帥命令によって軍をおさえ、国の方針を天皇の意志によって決したらどうなるか。必然的に天皇にして大元帥に全責任が生じてくる。しかし、天皇に責任を負わすことはできぬ。ということは、成否にかかわらず、もしこの方式を採用すれば、輔弼の最高責任者たる総理大臣は一命を投げだしてかからねばならぬ。(中略)鈴木首相はそこまでの覚悟をきめた。徹底抗戦という軍事上の決定ーつまり統帥権にまで、責任のない政府が土足で踏み入り、すべてをご破算にし、戦争を終結させるためには、天皇の大権を天皇自身に駆使してもらうしかない。”聖断”である。」
極めて論理的で現実的だが、本当に一命を賭す覚悟が必要だったことはよくわかる。自縄自縛的に戦争を止められなかった政府、軍部は現代日本の「決められない病」に通ずるところもある。外から見れば「何やってんだろう」というところだ。それが日本人ということか。