海の地政学──海軍提督が語る歴史と戦略 ジェイムズスタヴリディス 早川書房 2017/09/07

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 元米海軍大将が海洋から見た政治、軍事的状況について述べた本。第一章から第七章まで太平洋、大西洋、インド洋、地中海、南シナ海カリブ海北極海についてそれぞれ歴史、若い下士官だったころの体験、現在の軍事的な状況について述べる形がとられる。職業軍人らしい冷静な見方が興味深い。太平洋の章の末尾では「(中国は)陸でも海でも、他のアジア諸国よりも広い領土を守らなくてはならない。(中略)皮肉なことに、中国の空母は自国が掲げたA2/AD(接近阻止・領域拒否)技術に脅かされている。というのも、日本や韓国、ベトナムのどの国もこの点では中国に追いついているからだ。戦略的に言えば、中国の空母計画は根本的に状況を変えるものではないが、近隣小国を不安にさせるだろう。」(48ページ)日本も十分な軍事的アピアランスを有すると位置づけられている。緊迫の度を高める南シナ海でいやおうなく一個のプレーヤーとしての役割を果たさなければならない。それが我々自身には見えていない日本の自画像なのだろう。