アメリカ音楽の新しい地図 大和田俊之著 筑摩書房 2021/12/23

筑摩書房 アメリカ音楽の新しい地図 / 大和田 俊之 著

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ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち J.D.ヴァンス 光文社 2017/03/15 - いもづる読書日記


カルチュラルスタディーズというのか、音楽評論家ではなく学者さんが書いた音楽評論。読みやすいとはいえないが、別に晦渋というわけでなく、書かれる対象が込み入っているのだろう。3章ヒップホップにおけるアフロ=アジアと9章BTSと「アジアン・インヴェイジョン」が興味深い。「これまで見てきたように、アフロ=アジア的な想像力には人種・民族的なエキゾティシズムが不可避的に絡み合っているが、その『遠さ=エキゾティシズム』と『近さ=感傷(センティメント)』の距離を操作することで(中略)ある種のエモーション=エモさが生まれるのであり、それこそがアフロ=ジャパニーズ・フューチャーリズムとでも呼ぶべきユニークな美意識を形づくるのである。」(61ページ)「これまでアメリカで漠然と共有されていた理想的な男性像は、とりわけ若者世代を中心に急速に支持を失った。こうしたアメリカ社会の変化や運動が、より中性的にみえるアジア系のアイドルの受容を準備したのはきわめて自然な流れであるともいえる」(193ページ)BTSがビートルズに比肩する存在とは思わないが、セサミストリートに韓国系のキャラクター、ジヨンが登場したこと、中国系のメンバーを含む少女パンクバンド、リンダ・リンダスが支持を集めていることも、著者のいう「アジアン・インヴェイジョン」、アジア人の可視化の一環なのかもしれない。