げんきな日本論 講談社現代新書 橋爪大三郎 大澤真幸著 2016年10月19日 講談社

『げんきな日本論』(橋爪 大三郎,大澤 真幸):講談社現代新書|講談社BOOK倶楽部

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ふしぎなキリスト教 講談社現代新書 橋爪大三郎 大澤真幸 2011年05月18日 - いもづる読書日記

だめだし日本語論 太田出版 2017.6 橋本治 橋爪大三郎 著 - いもづる読書日記

「ふしぎなキリスト教」のコンビによる日本論。さすがに「ふしぎな日本人」とは題せなかったか、それでもある程度、日本人があたりまえと考えていることが相対化されている。通史を、古代~奈良時代、平安~室町時代、戦国~江戸時代にわけ、討議する。知的なスリルに満ちてはいるが、なんか着地しない浮遊感があるのは相変わらず。
「橋爪 歌というものは、日本の男女関係や、村落コミュニティの活動などと密接な関係があって(中略)男女の間にコミュニケーションが必要だから、歌をよんで届けることになった。口頭で届かないなら、字で書いて届けなければならない。男性も女性も字を読み書きしなければならないという状況があって、気がついたら平仮名になっていた。」(149ページ)「大澤 漢字をベースにした、公的で政治的な世界が、一見、それだけで自足して動くように見えながら、その実、そのカウンターバランスのようなものとして、ひらがなで象徴されるもうひとつの世界を、どうしても必要としている。(中略)かなを持っているおかげで、十全な表現を持っている気分になる。日本は歴史的に、そうやってきた。」(172ページ)
「信長の時代、軍事力というものは、子どものころから修練するスキルではなくなりかけていた。鉄砲は、ちょっとした練習で、大きな殺傷力が手に入る。それなら、傭兵で十分だ。(中略)信長は、超越的なアイデアを実現するために軍事力が必要で、軍事力が正当性を作り出すというところまで、まことに正しく考えた。レーニンみたいに。でもその主体が武士であると考えた点で、大変に矛盾している。(中略)日本の中世史、近世史は、武士という存在の矛盾をめぐるストーリーなのです。」(288ページ)