海外で研究者になる: 就活と仕事事情 中公新書 増田直紀 中央公論新社 2019/06/25

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海外でPI (principal investigator ≠ポスドク)になる方法を述べた本。著者が東大講師から英ブリストル大上級講師に転出した経験をもとに、海外PIにアプライする際の方法論を述べている。著者の専門(ネットワーク科学、数理生物学)と就職国に限定された情報にならないよう、米国やアジアを含んだ各国、他分野の研究者にもインタビューして情報を補完している。内容は非常に具体的で有用、研究者をやっている日本人全てが読むべき。例え海外PIにならないにしても、少なくとも、自分自身の「市場価値」について考える契機になるだろう。
研究者の研究力を最大化する施策は様々行われてきて、日本に関して言えば、まああまり上手くいっていないと言っていいだろう。英国では研究費とバーターで雑用を減らす(代わりに雑用を担当する人材を雇用する)制度があるようだ。日本の大学改革には、それ自体が間違っていた昔の方が良かったというノスタルジアと、改革が不徹底なせいで成果が上がらないとするラジカリズムが存在するわけだが、企業の行う基礎研究の地盤沈下等社会的背景も併せて考えないとフェアではない。昔、論文は書かないけど座談でどんどんアイディアを提供する学者さんの話を読んだことがあるんだけど、どの本だったか?本読書日記のテーマである「これは何かに似ている」が刺激される本でもあった。
「水曜の朝に、学科のお茶の時間がある。義務ではない。来たい人が勝手に来てお茶やコーヒーを飲みながら雑談する。軽く雑談できる環境は大事なので、この時間は、学科の文化として私は好きだ。(中略)もし、お茶の時間に対して、予算を割けない、時間を取れない、部屋をとれない、といった合理性のメスが入ってしまったら、職場はきっと息苦しくなっていくだろう。」(134ページ)