高学歴女子の貧困 女子は学歴で「幸せ」になれるか? 大理奈穂子、栗田隆子、大野左紀子著 水月昭道監修 光文社新書 2014/2/20

高学歴女子の貧困 大理奈穂子、栗田隆子、大野左紀子、水月昭道/監修 | 光文社新書 | 光文社

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博士漂流時代 榎木英介著 ディスカバー・サイエンス 2010/11/15、高学歴ワーキングプア「フリーター生産工場」としての大学院 水月昭道著 光文社新書 2007/10/16 - いもづる読書日記

高学歴ワーキングプア」の著者の次著。女性の問題は手に余るとのことで、共著となっている。議論が収束せずとっちらかった印象を受けるのは共著のためというより、問題の複雑さと困難さによるものだろう。
大野左紀子氏による第五章が面白かった。「父の娘」という言葉が何度も出てくるが、ユング心理学秋山さと子氏の著作を思い出した。「父の娘」タイプの女性は父権社会において成功するが、母性に対して忌避感を持ち、そのため情緒の未発達という犠牲を払わされることになる。大野氏はこうした陥穽を免れているように思う。「アートを『父の文化』『男の世界』としてとらえてきたこと自体に、自分が『性』を意識してきた、せざるを得ないなかで生きてきたという事実は表れていた。女性性という言葉はあまり好きではないが、そういう言葉でしか言いようのない何かが、実は作品のあちこちに顔を出していたのだということにも後で気づいた。」(172ページ)見事な自己省察だと思う。