双調平家物語ノート(1)権力の日本人 橋本治 講談社 2006年03月31日

『双調平家物語ノート(1) 権力の日本人』(橋本 治)|講談社BOOK倶楽部

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『院政の日本人 双調平家物語ノート2』(橋本 治)|講談社BOOK倶楽部

橋本治二冊目。「双調平家物語」のプロダクションノートで、「窯変源氏物語」にも「源氏供養」という本が出されている。本書は平家物語において「平清盛が悪役である利用がわからない」から始まり、平安時代から天武・持統朝に至るまで、時代をさかのぼるように、主として権力構造をときあかそうとする。
「『下級官僚でもあり、と同時に武者でもある』は、源為義の段階では、『我慢して、矛盾を露呈させないようにする』という収められ方をしていたが、保元の乱平治の乱で勝利した清盛では、もうそれが抑えられない。(中略)だからこそ、その平氏の中で『武者であること』と『官僚であること』は矛盾したものになってしまうー清盛の平氏の滅亡は、その結果だとしか思えない。」(111ページ)
「藤原摂関家が、なぜ『摂関家』という絶対の優位性を獲得してしまったかと言えば、この一族の男たちが、自分の娘を『天皇の生母』とすることに成功してしまったからである。」(168ページ)「藤原氏の栄華は、持統天皇の中にある『女の心』を把握した結果だともいえる。摂関政治の時代が『女の時代』であるのは、ある意味で、むべなるかなである」(265ページ)鎌倉以降、女性は歴史の表舞台から退き、日本史は退屈になる。
「余分な話をしてしまえば、私は不思議である。どうして日本人は、『トップの意思を反映しない組織』を平気でそのままにしておくのだろう?院政の時代以後、朝廷は衰微する。上皇は力を持つが、しかし、朝廷の抜本的改造は起こらない。」(194ページ)日本史をつらぬく二重権力構造の話は本書の続編である「院政の日本人」で、縦横に語られるのだろう。