女たちのテロル ブレイディみかこ著 岩波書店 2019/05/30

女たちのテロル - 岩波書店

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花の命はノー・フューチャー ─DELUXE EDITION ブレイディ みかこ 著 ちくま文庫 2017/06/06 - いもづる読書日記

ブレイディみかこ5冊目にして、ついにたどり着いた主著(私基準で)。「僕イエ」と同時期発売だったらしく、素晴らしいプロダクティビティ。
関東大震災(1923年)時に、皇太子暗殺を企てた罪に問われ、獄中で謎の死を遂げた金子文子アイルランド、ダブリンのイースター蜂起(1916年)に参戦し、兵士として負傷した唯一の女性となったマーガレット・スキニダー、イギリスの女性参政権運動(サフラジェット)で活動し、競馬場でジョージ国王の馬に飛び込んで死亡(1913年)したエミリー・デイヴィソン、3人の生涯が並行して描かれる。 セクシュアリティが主調音になるのは、女性が社会性の被膜(安冨歩なら立場主義と呼ぶだろうか)を廃して、自らの真実にのみ立脚しているからだろうか。金子文子はこう書く「妾(わたし)はセックスに関しては、至極だらしのない考えしか持っていない。性的直接行動に関しては無条件なのだ。だがそれと同時に妾が一個の人間として起つ時、即ち反抗者として起つ時、性に関する諸諸のこと、男なる資格に於て活きている動物―そうしたものは妾の前に、一足の草履程の価値をも持っていないことを宣言する。(『金子文子書簡』、山田昭次『金子文子』)」(102ページ)
「凄腕スナイパーたち(引用者注:マーガレットとマダム・マルキエビッチ)は、いまダブリンのグラスネヴィン墓地にあるリパブリカン・プロット(共和主義者共同墓地)で共に眠っている。母と娘のような、姉と妹のような、特別な女どうしの絆で結ばれた二人だった。」(206ページ)