原発危機と「東大話法」 傍観者の論理・欺瞞の言語 安冨歩 著 明石書店 2012/01/06

原発危機と「東大話法」 - 株式会社 明石書店

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安冨歩5冊目。この間安冨が主人公である映画、原一男「れいわ一揆 」もネットで見た。本書の出版は震災から間がないこともあって、当時横溢していた危機感があふれ出すような感じがする。
「人間ではなく『立場』から構成される『社会』は、一方で、立場を守るための、異常なまでの利己主義を要請しました。また、ここから生じるストレスを誤魔化すための果てしない消費は、弱者に対する搾取と、自然環境に対する強烈な破壊圧力をも生み出しました。こうして『無私の献身』と『利己主義』が不気味に共存する、ある面で道徳的でありながら、果てしなく不道徳でもある戦後社会が形成されたのだ、と私は考えます。」(215ページ)
立場が我々を縛るのは、立場を守ろうとする自己欺瞞に気づいているからだ。この自己欺瞞の方法が東大話法なのだろう。「個々の人が、自らの中の『東大話法』を見出して取り除くことに努力せねばならず、そうすることではじめて、他人の欺瞞話法も見ぬけるようになります。(中略)そうやって多くの人が『免疫』を作動させれば、東大関係者も『東大話法』などを振り回せなくなり、真摯な思考に向かって一歩を踏み出すことが可能になります。」(192ページ)
「れいわ一揆 」で安冨は、管理社会の切断面を顕在化させる(正確に何と言っていたか思い出せないが)ために、馬を連れて選挙運動を行う。確かに彼は異化作用を発揮させていた。立場を捨て「自らの真実にのみ立脚」して生きることは、男には、存外難しい。