蘇我氏 ― 古代豪族の興亡 (中公新書) 倉本一宏 中央公論新社 2015/12/18

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 推古帝時代というか聖徳太子の時代に重要な役割を果たした蘇我氏の歴史を語った本。蘇我氏は始祖である稲目の時代に興った葛城系の氏族(朝鮮半島出身ではない)。馬子、蝦夷、入鹿と天皇家と姻戚関係を結び興隆した。乙巳の変蝦夷、入鹿は亡くなり、本宗家は亡んだが、蝦夷の甥である石川麻呂に始まる蘇我倉氏は大化の改新以降も勢力を保った。その後石川氏、宋岳氏と名前を変え、中級官僚として平安時代まで延命した。著者の主張は明快である。
 藤原不比等蘇我倉氏の連子の娘である娼子を妻としていたとのことである。「蘇我氏は大王家の母方氏族として、また大化前代における大臣家として、その尊貴性を認められてきた。そしてその認識は律令制の時代に至ってもなお、旧守的な氏族層、あるいは皇親の間に残存していた可能性が強い」(186ページ)。しかし、ここから時代は蘇我氏から藤原氏のものへと移っていく。
 壬申の乱について筆者は、「天智としてみれば、乙巳の変以来、(中略)自身と鎌足の二人による専制支配を続けてきた結果が、晩年に自己の王子の政権基盤として頼みにする藩屏がこれだけ(わずか4つの氏族、引用者注)に過ぎないという事態につながったのである」(160ページ)と述べている。氏族、血筋をめぐる物語の政治性がときには必要ということか。