知の旅は終わらない 僕が3万冊を読み100冊を書いて考えてきたこと 文春新書 立花隆 2020年01月20日

文春新書『知の旅は終わらない 僕が3万冊を読み100冊を書いて考えてきたこと』立花 隆 | 新書 - 文藝春秋BOOKS

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私は立花隆愛好家のコア世代で、1983年刊の「宇宙からの帰還」は大学生の時に読んで結構影響を受けたと思う。「サル学の現在」も「精神と物質」も「中核対革マル」も面白かった。立花隆は「知の巨人」という形容はあたらないまでも、極めて優れたジャーナリストであると再確認した。「宇宙からの帰還」以前の立花は何より「田中角栄研究」の人だった。一審判決のときだったか、複数のメディアの取材を受け、それぞれ違う切り口でロッキード裁判の意味を提示して見せた。こうした切れ味が立花の魅力だ。
しかし、ときに思考が浅薄で一面的に流れる。スピード感を大切にするジャーナリストの宿命か。「キリスト教は、イスラム教、仏教と並ぶ世界三大宗教のひとつですが、現代人、特にヨーロッパ以外の所に住んでいる人というのは、キリスト教の原点を見失ったいることが多いのです。(中略)キリスト教の原点は、もともと土着宗教であったという事実のなかに見出せるのです。」(169ページ)多分、これは違う。キリスト教ユダヤ教から脱して地中海世界の非ユダヤ人に広がった。伝播を担ったのは土着性の薄い交易人だったのではないか。そして、強靭で抽象的な教義はほぼ必然的にプロテスタントを生み、伝染病のように新大陸へ、世界へと蔓延した。

とはいえ、立花の素材選びと突破力は魅力的だ。「天皇と東大」以下、いろいろ読みたい本が増えた。