銀輪の巨人 野嶋 剛 東洋経済新報社 2012/6/1

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TO イノベーションはなぜ途絶えたか: 科学立国日本の危機 (ちくま新書1222) - はてなキーワード

 

 GIANTは1972年設立の台湾の自転車メーカー。他社ブランドOEM生産から、自社ブランドによる国際市場での確立、中国への進出成功という物語が語られる。第5章(本書では第5走)は「自転車産業が衰えた国、日本」と題して、かつて自転車大国であった日本の凋落が語られる。「製造業はコストとの戦いだ。生産現場は常に安い人件費を求めて、多くの国をさまよう。(中略)それぞれの国が生産拠点を持った後、その産業を自分のものにするチャンスを生かすことができれば、世界的な販売力を持つナショナルブランドを持つことができる。(中略)自転車のチャンスは1990年代後半だったのではないだろうか。国内生産と中国からの輸入のバランスが取れている時期だった。この時期に、日本のメーカーがもし台湾のように国内生産を中・高品質の自転車に転換する方向に舵を切っていたらー、そう思わざるを得ない。」(164ページ)。「ジャイアントがここまでの成長を可能とした理由とは『絶え間ないイノベーションへの意欲』と『企業としての生き残りへの危機感』、そして『トップによる長期的判断に基づく大胆な決定』の三つではなかったかと思う」(171ページ)。このあたり今読んでいる「イノベーションはなぜ途絶えたか」に通底するかなと思う。
 私は2003年にGIANTのマウンテンバイクを買って自転車生活を始めた。2015年に丸石エンペラーを買うまで巨人号は楽しい遊び相手だった。自転車に乗ると全く違う視座から世界が見えると思った。本書はGIANTの成功物語であるが、登場人物が自転車を体感しているという一点でも親近感が沸く。自転車の不思議さである