サッカーと人種差別 文春新書 陣野俊史 文藝春秋 2014/7/18

文春新書『サッカーと人種差別』陣野俊史 | 新書 - 文藝春秋BOOKS

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『レ・ブルー黒書――フランス代表はなぜ崩壊したか』(ヴァンサン・デュリュック,結城 麻里)|講談社BOOK倶楽部

冒頭、1998年のフランスワールドカップで優勝したフランス代表についてこんな風に書かれている。「優勝後のシャンゼリゼ通りは数百万の人が埋め尽くした。(中略)フランスはそのときすでに多くの人種や民族を抱えていたが、その見事なまでの融合の象徴が、98年フランス・ワールドカップ優勝チームだと言われた。(中略)いまは別の見方ができる。フランスは1993年以後、移民規制の法律を整備していた。段階的に規制を厳しくして、いちおう完結をみたのが、ちょうどフランス・ワールドカップの頃だった。(中略)フランス社会は外に対して扉を閉じつつあった。(中略)だからこそ、シャンゼリゼは人で溢れたのではなかったか。(中略)息苦しくなる社会を蹴っ飛ばすような壮挙だったからこそ、人々はお祭り騒ぎになったのではないか。」(19ページ)ここを起点に、多くのプレイヤーが差別を被った事績が経年的に列挙されていく。ダニエウ・アウベスが投げつけられたバナナを食べた一件は私も記憶がある。
解決策として著者は「コスモポリタンのレッスン」を提言する。イビツァ・オシムが、ボスニア・ヘルツェゴビナを構成するムスリム系、セルビア系、クロアチア系を融和させた役割に注目する。ここでオシムはどの民族にも属さない「コスモポリタン」であったと。「サッカー好き」を共通項に、理解し合い、支え合うコスモポリタンになって行こうと。