嘘と絶望の生命科学 榎木英介 文春新書 2014年07月18日

文春新書『噓と絶望の生命科学』榎木英介 | 新書 - 文藝春秋BOOKS

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研究不正と歪んだ科学|日本評論社

著者は理学部生物から医学部に入りなおして現在病理医という方。立ち位置的に自分と共通する点が多いのか、ポレミカルな本のわりに納得できる点が多い。目次を引用してみよう。1「奴隷」が行うバイオ研究、2ブラック企業化する大学院、3カネが歪めるバイオ研究、4研究不正ー底なしの泥沼、5バイオを取り戻せ。1~4はある程度感じていたことだが、データが豊富に提供され、客観的でよくまとまっている。第5章の処方箋は「インパクトファクター至上主義を止めよう」、「日本版研究公正局を設立しよう」、「ソーシャル査読(ネット集合知による研究者監視)を活用しよう」、「ピペットを捨て町に出よう(プライベートラボによる独立研究)」等々、あまり実効性が感じられない。「ポスドク問題など、若手研究者の問題についても、当事者意識を欠いた教授の発言を何度も聞いてきた。(中略)そんな発言を聞くと、むしろポスドクを使い捨てる今の研究体制に適応したからこそ教授になれたのだと言わざるを得ない。こんな人達ばかりだとしたら、自律に期待するほうがおかしいかもしれない。」(226ページ)この絶望感との温度差が大きい。