未来への大分岐 資本主義の終わりか、人間の終焉か? マルクス・ガブリエル マイケル・ハート ポール・メイソン 斎藤 幸平 集英社新書 2019年8月09日

資本主義の終わりか、人間の終焉か? 未来への大分岐 – 集英社新書

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文学と非文学の倫理 吉本隆明;江藤淳 中央公論新社 2011/10/22 - いもづる読書日記

 「帝国」三部作をアントニオ・ネグリと著したハート、NHK「欲望の資本主義」のガブリエル、「ポストキャピタリズム」のメイソンに斎藤幸平氏がインタビューした本。ちょっと私の手にはあまる難しさ。斎藤氏の学識とプロデュース力が素晴らしい。基調となっているのは情報化社会のポピュリズムに対する危機感だろう。ハートはトランプはナポレオン3世だと語り、サンダースは自分の支持者から学んで政策を深化させたとみる。メイソンは情報化社会における資本主義について語る。
 ガブリエルは「自明の真実」をもとに熟議による政治、evidence based politicsを提唱する。相対主義的な主知主義、とりわけニーチェが批判される。きわめて左翼的な言説を期待しながら、意思決定システムはまるで江藤淳保守主義のようだ。ハートの章の最後にも、ドゥルーズ(!)を引用してこんなことが云われる。「左派の政府というのはありえない。つまり、存在しうるのは、左派のための場所を開放している統治機構だ。」(126ページ)なにか、つきぬけた諦念のようなものが通底しているようだ。斎藤氏の活躍を期待したい。