上級国民/下級国民 小学館新書 橘玲 2019/8/1

上級国民/下級国民 | 小学館

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ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち J.D.ヴァンス 光文社 2017/03/15 - いもづる読書日記

米国はヨーロッパに染み付いた身分制を排除し、民主主義=自由競争社会を築いた。しかし、人種差別や性差別は根強く残り、顕在化しない形で身分制も残存した。米進駐軍は、戦後日本を身分のリセットされた理想社会にしたいと考えていたいわれる。こうした平等主義が戦後日本の基調音だった。「上級国民」はいるわけがないと思うが、確かに下級国民はいる。本書は平成日本の経済的困窮による下級国民の誕生を活写する。その上で、著者はアメリカの階層構造、サイバーリバタリアン/リベラル/マイノリティ/プアホワイト(203ページ)という図式を描き、現代日本の補助線としようとしている。注目されるべきは最富層のサイバーリバタリアンと最貧層のプアホワイトが、ネトウヨ的な言説で共鳴しあっている点で、これは確かにトランプ現象をよく説明している。単なる暴論、いいがかりとしか思えない上級国民批判にも、それを成り立たせてる心情はある。それでも「平等」をこい願う日本人が悲しい。