幻影からの脱出 原発危機と東大話法を越えて 安冨歩著 明石書店 2012/07/20

幻影からの脱出 - 株式会社 明石書店

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誰が星の王子さまを殺したのか――モラル・ハラスメントの罠 安冨歩 明石書店 2014/8/29 - いもづる読書日記

安冨歩4冊目。東大話法、立場主義、ナチスの狂気、マイケル・ジャクソンと、著者のモチーフが揃っている。終章、様々な閉塞感に対する脱出口としてなでしこジャパンのエピソードが示される。なでしこジャパンは2007年に中国で行われたワールドカップで、多くの観客からブーイングを受けながらも、試合終了後に「謝謝CHINA」という横断幕を掲げ、中国人に感銘をあたえたとのことだ。「私は彼女らがこんなにも強くなった理由のひとつは、『謝謝CHINA』という『礼』によって、いわれなき侮蔑という『非礼』を打ち倒すような、驚くべき勇気を獲得したことにある、と思っています。」(232ページ)これは著者の次のような考えを体現したものといえるだろう。「言葉が堕落してしまえば、人は現実を認識できなくなります。(中略)社会全体が現実を認識する能力を失えば、社会は暴走してしまうでしょう。言葉が大切であるのは、それが世界を認識するために不可欠だからです。そのため、言葉は常に正される必要があります。言葉が歪んでしまうと、全ては歪んでしまいます。言葉を正すには、自らの感覚に一致した言葉を、いかなる状況においても使い続ける必要があります。この勇気が、言葉を守ります。言葉を守ることが、認識を守り、認識を守ることが、行為を守ります。」(65ページ)
安倍政権、菅政権から受ける強い違和感、嫌悪感、徒労感はこの言葉が歪められていることに起因すると考える。これを正すために、微力ながら、正しい生き方に努め、正しい言葉を使っていきたいものだ。それで世界が変わると信じて。