未聴の宇宙、作曲の冒険 - 春秋社 ―考える愉しさを、いつまでも
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谷川俊太郎が聞く 武満徹の素顔 谷川俊太郎【聞き手】 小学館(2006/11) - いもづる読書日記
現代音楽史 闘争しつづける芸術のゆくえ 沼野雄司 著 中公新書 2021/1/19 - いもづる読書日記
先日、水戸芸術館において「1964音風景」というコンサートが行われた。湯浅譲二氏が登壇され、インタビューとともに「ホワイト・ノイズによる〈プロジェクション・エセムプラスティック〉」というテープ音楽が上演された。音とともにこの曲の楽譜というかスケッチが上映されたのだが、片対数グラフであることに感銘を受けた。湯浅譲二氏が、音楽が指数関数の世界であることを認識できる理系マインドの方だったのだと。というわけで本書を読んでみた。
本書はNHK「現代の音楽」の司会者でもある作曲家の西村氏が湯浅氏にインタビューしたもの。前半は作曲するモーティベーションというか、思想的な内容が語られる。後半は技術論や現代音楽史のような話になり、やはり実作者のいうことは率直で面白い。「音楽というのは、物語もそうですけど、時間軸に即して展開されるわけですから、僕は音楽それ自体のナラティビティというのがあるというのが持論なんです。全く言語的じゃないけども、音楽的な起承転結というか、必然的なナラティビティというものが音楽にはなければならないと思っています。聴く側は(中略)その人なりにどういう聴き方をしてもいいと思う。でも、それにもかかわらず、ある種の宗教的な畏怖感とか(中略)そういうものをある共通的なものとして感じることはあるんじゃないかな」(160ページ)