老化とは何か 今堀和友著 岩波新書新赤版297 1993/09/20 

老化とは何か - 岩波書店

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アルツハイマー征服 下山進 KADOKAWA 2021年01月08日 - いもづる読書日記

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アルツハイマー病研究、失敗の構造 | みすず書房

坂本龍一 『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』 | 新潮社

 糸井重里(74)と谷川俊太郎(92)の対談を読んでいて(第2回 「俺は若い」とは言いたくない。 | 詩人の気持ち。 | 谷川俊太郎さん | ほぼ日刊イトイ新聞)「老いてても元気、とか、老いるのはつらい、という本はいくつもあるんだけど、もっとふつうに、『だんだん衰えていく』というのを読みたいんだけどさ。」とあった。ではまず、私の現在地を書いてみようかと思った。最近、感じるところが多いので。
 今年は高橋幸宏坂本龍一が相次いで亡くなった。最近は長生きの人が多いので、比較的早いといえるだろうが、それでも自分よりひと世代うえの方が亡くなるようになったのは実感される。そう、ぼくは1961年生まれの今年62歳だ。まだ、老け込むような歳ではないが、老化は感じる。今日書きたいのは主にふたつだ。足のことと目のこと。いかにも老人だ。
 ここ5年くらいジョギングを楽しんでいた。と書いたところで、ん?と思って、エクセルを開いてみた。7年だ。初年は年間500kmだった。去年は初めて1000kmを超えた。でも、今年4月のマラソンは散々だった。これまで、フルマラソンに3回チャレンジして一度も完走できない。マラソンの後、しばらく走らなかった。そう3ヶ月くらい。何度か再スタートしようとしたが、10km走るのも苦労するようになった。特に走った翌日はほぼダメだ。疲れが抜けないのだ。9月になったので、暑さは和らいでいくことだろう。涼しくなることを楽しみに、無理なく、粘り強く走り始めよう。でも、フル完走はもう無理じゃないかと思っている。
 お盆にコロナにかかった。解熱剤のおかげもあって、2日間で熱も下がり、本が読めるようになった。私は近眼なので、度の弱い遠近両用メガネを老眼鏡と称しているが、この老眼鏡ばかりかけていると、そちらの方が楽になった。世間と隔絶し、視界のボヤけた生活をしていたら、「それでいいや」という気分になっている。多分、5年後にこの文章を読んだら、何にもわかっていなかったと思うに違いない。
 「老化とは何か」を再読して、よくまとまった好著だと再認識したが、初回(2000年前後だったと思う)のような感銘は受けなかった。1993年に老化はフロンティアだったのだが、この30年間行政は何をしていたのかと思う。ひとつは1997年の介護保険の導入、もうひとつのメルクマールは本年のアルツハイマー病治療薬の認可であろう。いずれも大きな一歩には違いない。でも、これらで高齢化社会のイメージが明るくなった感じはしない。本書は老化という生物現象をいくつかの切断面で明らかにしていて、論点はシャープに整理されている。にもかかわらず、対策といえば「自分のことは何としてでも自分でやろう」(196ページ)といったわかりやすいところに落ち着いてしまうのが残念だ。本書は品切れということだが、古くなった用語法をあらためて、改定新版が出ることを希望します。