「証し 日本のキリスト者」最相葉月 [ノンフィクション] - KADOKAWA
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【新装版】日本人のための宗教原論 あなたを宗教はどう助けてくれるのか 小室直樹 徳間書店 2021/12/29 - いもづる読書日記
韓国はなぜキリスト教国になったか 鈴木 崇巨 著 春秋社 2012/09/30 - いもづる読書日記
ふしぎなキリスト教 講談社現代新書 橋爪大三郎 大澤真幸 2011年05月18日 - いもづる読書日記
書き換えられた聖書 バート・D・アーマン 著 ちくま学芸文庫 2019/06/10 - いもづる読書日記
最相葉月さんは「絶対音感」が面白かった。本書は135人ものキリスト者にインタビューした1000ページを超える大著。ひとつひとつが重く、拾い読みができない。「この本について」には、「ここにはまぎれもなく、二十一世紀初頭の日本のキリスト教の実相があり、一人ひとりの語る信仰生活は、現代社会が抱える問題と相似形にあると実感している。」(15ページ)とあるが、禁教時代、維新、戦争、敗戦、学生運動といった近現代日本の縮図が投影されている。東日本大震災、コロナ禍、ウクライナ戦争といった最近の状況も、容赦無く教会に問題を突きつける。
コンタクトという映画があった。ジョディ・フォスター扮する地球外生命の研究者の理解者がカトリックの団体に所属していたように思う。これはもちろんフィクションだが、ありそうなことだと思わせるところがキリスト教にはある。この本では、日本にもカトリック、プロテスタント諸派、英国教会(聖公会)、東方教会といった宗派が活動していることがわかる。それぞれの宗派の宣教者が、母体組織のバックアップを受けていることは間違い無いだろう。キリスト教のような既存宗教が現代人が失ったスピリチュアリティの埋め草として期待されると思うが、これは宗派の世界戦略に組み込まれることでもある。
正直これだけの紙幅を費やして著者が何が言いたかったのか判然としない。「あとがき」で、無教会派の荒井克浩氏の信仰義認論を紹介している。「光り輝く復活ではついていけない。癒されないまま苦しむイエスだからこそ、ついていける。癒されない神が共にいてくださることで、神に受け入れられていると知る。それこそが義であり、復活者との出会いである。」(1086ページ)キリスト者の独善に対応する有効な処方だと思うが、これは無教会派だから言えることなのでは?と思う。既存宗派の枠内でこうした神学論争は可能なのだろうか?ここまで思想を純化させていくのは日本的な現象なのだろうか?