ぼくはあと何回、満月を見るだろう 坂本龍一 2023/06/21 新潮社

坂本龍一 『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』 | 新潮社

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坂本図書

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高橋幸宏細野晴臣を天才、坂本龍一は秀才と位置付けていた。天才を狂気と読みかえると、晩年の坂本にもそうしたノイズが現れていたような気がする。本書の最もエモーショナルな部分は、小津安二郎の映画が直視できないと述べた部分で、それにつづき、「きっと、この光景はもうどこにも存在しないのだという『非在』の感覚が、どうしようもないほど郷愁を誘ってしまうからでしょう。ブルーズは19世紀後半に、奴隷としてアメリカに強制的に連れて来られた黒人たちが築き上げた音楽ジャンルですが、不思議なことに、彼らの出自であるアフリカの国々にはブルーズのような音楽はない。既に失われてしまった故郷へのノスタルジアが新たな文化を生んだのですね。」(154ページ)と語っている。極めて知的な処理だが、細野はブルーズの発見を自らの体内に取り込んで再生産してしまうような凄みがある。一人になった細野さんから目が離せない。