能から紐解く日本史 扶桑社 大倉源次郎 2021/03

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大化改新を考える 岩波新書新赤版1743 吉村武彦 2018/10/19 - いもづる読書日記

「白村江」以後 ― 国家危機と東アジア外交 (講談社選書メチエ) 1998/6/1 森 公章 - いもづる読書日記

双調平家物語ノート(2)院政の日本人 橋本治 2009年6月30日 - いもづる読書日記

応仁の乱 - 戦国時代を生んだ大乱 (中公新書) 呉座勇一 中央公論新社 2016/10/19 - いもづる読書日記

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中上健次短篇集 - 岩波書店能の小鼓方大倉流宗家の大倉源次郎が、演目と背景について紹介した本。室町時代に成立した能という芸能に盛り込まれた様々な思想が、あたかも考古遺物を発掘するようで興味深い。「『国栖』は、追いつめられた大海人皇子が、吉野山中で権現信仰の民族=賀茂族や国栖族出会い、助けられて復活し、ついに政権を取った、という物語です。別の言い方をすると、天武天皇は吉野で、山岳信仰の人びとの大きなネットワークに助けられた、ということです。」(58ページ)
中上健次に「蝸牛」という作品がある。「十九歳の地図」という短編集に収められていて、中上の最初の転換点と呼ばれる作品である。この漢字2文字の短編は「蛇淫」や「化粧」へ至る中上の代表的なスタイルになる。背筋の伸びたスタイルに能との共通点を感じた。吉野の権現信仰を考えると、いうまでもなく熊野を根拠とした中上文学が、能と共通したにおいを持っていても不思議ではない。中上は能には言及しなかった(たぶん)。教養主義は潔しとしない姿勢も好ましかったが。