「学歴エリート」は暴走する 「東大話法」が蝕む日本人の魂 講談社+α新書 安冨歩  2013年06月21日

『「学歴エリート」は暴走する 「東大話法」が蝕む日本人の魂』(安冨 歩):講談社+α新書|講談社BOOK倶楽部

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満洲暴走 隠された構造 大豆・満鉄・総力戦 安冨歩 角川新書 2015年06月17日 - いもづる読書日記

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安冨歩2冊目。「はじめに」に本書の主張がよくあらわれているので引用。「これまで『壊れるわけがない』と信じられていた社会インフラが次々と崩壊しています。(中略)じつはこれらのインフラと時を同じくして社会に生み出されながら、現在、やはりガラガラと音をたてて崩壊しているものがあります。それは『学歴エリート』です。(中略)これまで企業や役所というピラミッド型の組織を昇っていくのにもっとも必要とされてきたのは、出世の”ライン”に乗ることや、”根回し”などの政治力です。(中略)組織自体が傾きはじめてしまうと、幹部に求められる資質は『先見性』や『決断力』や『実行力』となり、有能な『事務処理屋』はお払い箱になってしまうからです。(中略)『学歴エリート』たちの言葉に、我々があそこまで違和感を覚えたのは、彼らから誠意や責任感というものが、まるで伝わってこなかったからです。その理由は、彼ら独特の『まやかし』と『無責任』に満ちた話し方にあると感じた私は、そうした彼ら一流の話術を『東大話法』と名づけました。(中略)今の日本にもっとも必要なのは、『自らの社会を覆う欺瞞を認め、事実を受け入れる』ということだと思っています。」
著者は戦後社会の担い手たちが、いかに30年戦争によって刷り込まれた行動パターンをなぞっていったかを描く。経済戦争も、受験戦争も、学生運動も太平洋戦争の出来の悪いパロディだったと斬って捨てられる。そこにあるのはシステムの維持が目的化し、システムの暴走を止められない日本人という自画像だ。ここから抜け出すのが難しいことは誰にもわかる。万能の処方箋がないのは著者にもわかっているが、とりあえず「懐疑主義からの離脱」を提言する。「『あやしいと思う立場から考える』というスタイルでは新しい知識を獲得することができず、どこへ動くこともできず、真理を求める他人を嘲る姿勢にしか結びつかない」(183ページ)多分、「東大話法本」にさかのぼっていかなくてはならないことがわかった。